2007年12月28日 (金)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その7

 ふ~ん……
 ふ~んって、それだけ?
 なにか言ってほしいの?
 で、出来ればなにか……、こ、こ、これだけ勇気出して……言ったんだからぁ……
 そうねぇ……、そういうの、世間では人気あるの?
 あります、あります。大ありですよー。
 そうなの?
 そうなんですよ。さっきもいったけど、ウソ偽りなく、キミのそのボディーは文句ナシ、天下一品だし、表情だって、そういうちょっとキツいかんじの女性がいいっていう男だっていないわけじゃないから、そういうことを全部ひっくるめて総合的に判断すると、キミなんかそうとう上位にランキングされる女性のひとりで、男性がほっとかないと思うよ。
 ふ~ん。でも、男なんて下らない生き物だから、そんなの関係ないわ。
 男が……下らない生き物?
 ええ。あなたに親切に解説してもらわなくても、ある程度自分の肉体が魅力的なそれとして他人の眼に映るっていうことは、前々から知っていたわ。だって、どこへ行っても私のこの巨きな胸を見て振り返らない男はいなかったし、近くに寄れば、どうにかしてこの胸を覗こうと見苦しいまでの努力を重ねるし、もしそれが、ブラウスのボタンがいちばん上までキチンと留められているなりなんなりして、その望みが適わなかったとしたら、こんどは穴が開くほど脚のほうに視線を注いできたりするから。
 マ、マ、マジメな男も……いるかもよ……
 そう?
 そ、そうだよ。確かに、キミがいったように失礼な視線を女性に向けて、不快な気持ちにさせてる男は数え切れないほどいるかもしれないっていうか、数えきれないほどいるにはいるけど、でも、全部が全部そういう男だっていうワケじゃないと思うし、それにさぁ、話を少し戻すようだけど、異性同姓を問わず、自分以外の人間にモテるっていうことは、決して悪いことじゃないよ。だって、好かれたくってもこの世には他人から好かれない男女がごまんといるんだから。そういうことを考えたら、視線の向けかたはともかく、好意をもってくれているっていう、そういう心の在り方だけは、素直にありがたいと思わなくちゃ。
 ……あなた、神学系の学生さん?
 シンガク系? あの、もう進学しきっちゃって、大学まで進学しちゃってるんだけど……
 違うわよ。私が言っているのは、ブッティストかって訊いているのよ?
 ああ、そういうこと。それは違う……、いや、身内で誰か死んだりしたら坊さんがやって来てお経をあげるわけだから、仏教に縁があるとえいば縁があるんだけど、多分、信仰心はその時に耳かき一杯分芽生える程度しか湧いてこなくて、普段はそんなことこっれぽっちも考えたりしないから、厳密にはブッティストっていえるかどうか微妙なラインで……
 なんだかよくわからい回答だけど、でも、あなたがいま言ったこと、一理あるわね。
 でしょう、でしょう? 他人から視線をむけられて、気分が悪くなるようなこともたまにはっていうか、キミの場合だとしょっちゅうかもしれないけど、でも、それはそれで、一方ではありがたいことでもあるわけだし、ひょっとしたら、ひょっとしたらだけど、自分がタイプだと思えるような相手から好かれたりする可能性だって同時に出てくるわけだから、どうしてもイヤっていうのじゃなければ、もっと努力して魅力を高めたほうがいいように思うけど。
 もっと? それって、どうしたらいいの? あなた、その方法を知っているの?
 知っているといえば知っているけどぉ……
 どんなの方法?
 そ、そうだなぁ……、まず表情を緩めて、その眉間のシワを……いますぐには取れそうにないみたいだから、じゃ、じゃあ、もうちょっと簡単な工夫のほうからいくと、ス、ス、スカートの丈を……み、み、短くするとかぁ……

          (つづく)

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2007年12月25日 (火)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その6

 えっ!? は、は、外す? ひょっとしてボ、ボクが!?
 そっ。あなた外してちょうだい。
 いっ、いっ、いいんですか、そんなこと、ホ、ホ、ホントにこのボクに任せちゃって……
 いまあなた言ったじゃない、私が腰を曲げて手を伸ばすより、眼の前で私の脚を見ているあなたが手を伸ばすほうが効率的だって。だから、サッサと外してちょうだい。
 じゃ、じゃ、じゃあ……、キミのリクエストに従って……、ガ……、ガーターのホックを……パチンパチンと……ずべて外して………、つ、つ、ついでに……ストッキングのほうも……スルスルスルっと……下の方に………
 ありがとう。楽になったわ。
 ……………
 なに? まだ何か問題があって?
 ……あっ、いや、そういうわけじゃなくて、なんていうか……、くり返しみたいになるけど、日焼けとかしてなくて、じつにキレイな脚だなと思って……
 自宅とここの往復だけだから。
 家とココの往復だけ?
 なに? 悪い?
 わ、悪くないけど、で、でも、なんていうか、も、勿体ないような……気がして……
 勿体ない? いってる意味がよく理解出来ないんだけど。
 あ、あの、話はすこし飛ぶようだけど、あの、キミ、さっきの逃げ出すようにして出て行ったあの男のひとは別として、男性にモテるんじゃない……?
 それ、なんのお世辞? 悪いけど、そんなこといってもお茶もケーキも出ないわよ。
 そっ、そっ、そういう意味で言ったわけじゃなよ。な、なんていうか……、ボ、ボクがキレイだって言ったのは、ほ、ほ、本気の本気で……、そう思ったから言ったまでで……
 本気の本気? どの辺を見て私がモテるって思うわけ?
 ど、どのへんって、なんていうか、ブラウスを前方に押し出している胸の膨らみは類を見ないような立派な山脈だと思うし、それに反してっていう表現が適切かどうかよくわからないけど、その下のウェストは、これはこれでまたビックリするほど絞りこまれてるし、オマケにその黒いミニ・スカートから伸びた二本の脚は、まるで持ち主が違うんじゃないかって思えるほど、細くてキレイな形してて、それであとちょっと表情を柔らかくするっていうか、人並みに力の抜けたかんじの表情にして、あ、も、もしっ、そういう脱力系が得意じゃないっていうのであれば、せめて眉間のシワだけでも……あっ、いやいや、なんていうか、えっと……、み、み、眉間にシワよせていることが……悪いって……、そう言ってるんじゃなくって、なんていうかぁ……、たとえ眉間に深いシワが寄っていたとしても、キミのその整った顔立ちを大きく崩したりするわけじゃなく、ひょっとすると、いや、もっと多くいると思うんだけど、そういうキツめの表情は、それはそれでストライク・ゾーンだぞっていう男性もいなくはないっていうか、その手の類の男性も最近徐々にその人口数を増やしつつあって……ああ、もうっ、自分でもなにを言ってるかわからなくなっちゃったから、この際ストレートにいっちゃうけど、表情はすこしキツくてちょっとアレかもしれないけど、でも、キミのその胸の巨きさは天下一品、文句なく超一流だし、それにミニ・スカートかはみ出した二本の脚は、これまた見とれちゃうぐらいに白くてスラリとしてて、もうめちゃスゴいボディーの持ち主だなと思ったからだよっ!

          (つづく)

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2007年12月22日 (土)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その5

 ちっ、ちっ、違います、違いますッ。た、た、確かに、結果としてキミに脚立に昇ってもらって、その……、ボクはその現場を見てないけど、さっきのあの男のひとと同じようなことをキミにしてもらったかもしれないけど、で、でも……、それがボクの本当の目的だったわけじゃなくって、あくまで……、あくまで結果としてそうなっただけであって、その結果……、理由はどうあれ、いまキミがこうしてこの脚立の上にたってるってことは揺ぎない事実であって、そうなってくると……、求めていないにも関わらず、ボ、ボ、ボクの目の前には、キ、キミの二本の脚が……、どうしたってボクの目の前の位置に来てしまうことも……、こ、こ、これもまた……揺ぎない事実なわけであって……、その事実であるキミの二本の脚を眺めるともなく眺めてみると、なんていうかもう、あにはからんや、いやいや、なにいってるんだオレは、と、と、とにかく、すぐ目の前にあるキミの二本の脚が、あ、あ、あまりにもキレイな脚だなと思ったと同時に、ちょっとだけど窮屈そうにも感じられたりして……
 窮屈そう? どういうこと?
 どういうことって、そ、そ、その部分をご説明もうし上げますとぉ……、あ、腿の、腿の途中までとはいえ、ストッキングを穿いたりしてるから、滅多にお眼にかかれないような、まるで脚専門のモデルさんの脚に勝るとも劣らない脚を、ストッキングで締め付けるようにしちゃってるもんだから、素晴しい形の脚であると同時に、見る側とすればちょっと窮屈そうな印象を受けて、よ、よ、よかったらだけど、ボ、ボ、ボクがストッキングなりガーターのホックなりを外してあげたいなぁ……なんて、そ、そんな不埒な、いや、いやいや、そうじゃなくって、そんな余計なこととも言えるようなことを、ふと思ったりなんかしたもんでぇ……
 今日はじめて逢ったばかりのあなたが、どうしてそこまでしようなんて思うの? それってどういう形而上学的思考なの?
 ケイジジョウガクテキって、あっ、いやっ、その、なんていうかぁ……、な、なんどもくり返すようだけど、スケベ心、いやいや、他意があってそういうセクハラ、スレスレのことをいい出だしたわけじゃなく、なんていうかそのぉ……、も、も、もし、もしもだけど……、もしキミがストッキングやらガーターやらを窮屈に感じていて、そういう窮屈なモノを外しちゃってもいいかなぁ……なんて、すこしでもそう感じているなら、た、た、体勢的にいって、なんていうかそのぉ……、キ、キミが腰を折って手を伸ばすより、ボっ、ボっ、ボクが手を伸ばして、ストッキングなりガーターのホックなりを外したほうが、こ、こ、効率的に作業が済むかなぁ……なんて、そういう考えに至ったわけであって……
 まどろっこしい説明だったけど、あなたが言っていること、一理あるわね。
 でしょう、でしょう? そ、そうなんですけど、でも、よくよく考えると、やっぱりさっきキミがいったように、キミとボクはきょう初めて顔を合わせたばかりだし、立場とすれば、図書館の司書さんと借りるかどうかよくわからない、ただのいち利用者に過ぎない者っていう、そういう間柄であって……
 じゃあ、外して。
 へっ?
 立場なんかどうでもいいから、外してちょうだい。

          (つづく)

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2007年12月20日 (木)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その4

 あっ、あっ、あのっ、なんていうかその……、わ、わかりやすく説明すると……、り、り、りっしんべんに……、その……、りっしんべんに……い、生きるって書く……あっ、ニラまないでっ、ニラまないでっ、べっ、べっ、べつにさっきのあの男のひとのことがあって……、そ、そ、それで……、話のついでとかなんとか理由つけて大体だけど……、大体だけどバ、バストのサイズとかを聞き出せたらって考えたわけじゃなくって……、ぐ、ぐ、偶然、そう、偶然の上に偶然がいくつも重なってこういうことになってしまって……、ボクとしてもこんなことになってしまって不本意っていうかなんていうかそのぉ……あっ、アレ、あの本かな? ボ、ボクが捜している本は……
 あれって、どれのこと?
 あっ、アレ……、えっと、えっと……、さ、最上段の棚の……、そこの左隅のほうの……
 どの本を指差しているのかわからないけど、でも、捜している本が見つかったのなら、脚立に昇って取れば。
 ……………
 なに? まだなにかあるの?
 あ、あのぉ……、そ、そのぉ……
 なに? さっきもいったように、私、ウジウジしているほとが嫌いなのよ。なんなの?
 ま、まってッ、まって……、いうっ、いうから……、えっと……、なんていうか……、短いながらも……、正確な言葉を……、それを矢を射るように……相手の中心に返してくるような……、そんなキミを前にすると、よ、よ、余計にいい出しにくいことなんだけど……、なんていうか……、よ、よ、幼少期のころから……、こ……、高所……恐怖症っていう……不治の病を患っているものだから……、ちょっとでも高いところは……、不安っていうかぁ……、心配このうえないっていうかぁ……
 たかだかこの程度の脚立で高所恐怖症だななんて、まったくだらないわねぇ。いいわ、私が脚立に昇って取ってあげるわ。
 ス、スミマ……セン………
 ………どれ? これ? それともこの本?
 そ、それじゃなくて、も、もうちょっと左の……あ、それ、ソレ……かな……? ボ、ボクが……捜している……本は………
 これ、19世紀の書かれた洋書だけど。
 ……………
 それに、父が大学のときに使っていた初等物理学の本で、あなたが捜してる類の………
 えっ!? なっ、なっ、なに?
 ……………
 な、なにっ!? な、な、なんですか? 上の方からそ、そ、そ、そんなにハードにニラみつけたりして……
 なんだかんだ理由をつけながら、あなたもさっきのあの男と同じように、ただこの私を脚立に昇らせたて、下から私の肉体を鑑賞したかっただけなんじゃない? そうなんでしょうッ!

          (つづく)

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2007年12月17日 (月)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その3

 か、かるく越してるって……、簡単に切り替えしてる……、キ、キミの返事のほうが……、軽いといえば軽いんだけど……、じゃ、じゃあ……、カ、カップなんかは……
 どうしてそういう質問するのっ!?
 あっ、まって、ニラまないで、ニラまないで……、さ、さ、さっきもいったと思うけど……、べ、べつにスケベ、いや、他意があってカップ数を尋ねたわけじゃなくて……、ただ、なんていうか……、最近の流れからいうと……、ただサイズだけを測っただけじゃ、巨きさを表現しきったことにならなくて……、サイズと同時に……、カ、カップのほうも計測して、そ、それで巨きさを判定したりする……、そういう風潮があるから……、だからそのぉ……、も、もしよければと思って……ついでに質問してみただけであって……
 なんだ、そういうこと。カップならFかGかHかIのどれかなんじゃない?
 FかGかHかIのどれかって、どっ、どうしてそんなアバウトなの?
 なんで?
 なんでって、だって、百歩ゆずって普段はそれでいいかもしれないけど、で、でも……、下着とか購入するときには、どうしたって正確なカップ数がわかってないと……
 下着は年に一度、インターネットを利用してまとめて、いちばん大きいサイズのものを購入しているわ。
 ネットでまとめて? いちばん大きいサイズのものを?
 なに? 悪い?
 い、いや、悪いわけじゃないけど、で、でも……、カラダに直接着けるモノだし、それになんていうかぁ……、同じネットで購入するのでも、男性じゃない女性が購入するわけだから、なおさらそういうモノを買うときは慎重にっていうかぁ……
 あなたのいわんとしていることはよくわかるけど、でも、私の場合、それで充分なのよ。街にあるお店だろうが、インターネット上のお店だろうが、どうせ私の胸にピッタリあてはまる下着なんて見つかりっこないから。
 な、なんとなく……わかるような……
 それで、あなたはなにを捜しているの?
 えっ!? なにを捜してるって、な、なんの話?
 なにか捜しものがあってこの図書館に来たんじゃないの?
 そっ、そうです……、そうそう……、胸のばかデカイ、いえいえ、なんてういかそのぉ……、えっと……、大学でレポートを……、そうそう、大学でレポートを書かなくちゃいけなくなっちゃって、それで資料になる本を捜しに……
 そう。それで、レポートに必要な本って、どんな類の本なの?
 それはそのぉ……、えっと……、とっさに口をついて出た答えだから、いやいや、急にふられても困るっていうか、なんていうかぁ……
 モジモジしていないでハッキリいいなさい!
 そっ、そっ、そういうふうに至近距離からニラ、いやいや、見つめられると、なんていうかそのぉ……、よ、余計にいいだしにくいっていうか、な、な、なんていうかぁ……
 まったく、焦れったいわねぇ。あなた男でしょう。
 そっ、それはキミに指摘されなくても……自分でも充分わかってるんだけど……、だけど、そうやって威圧的なボディー、いやいや、威圧的な態度で言葉を投げつけられると……、ど、ど、どうしたって……受け止める側としては……いや、こんなこと言ってるとまたキミからお叱りを受けそうだから、元気を出してボクが捜してる本を説明すると……、あの……、ボ、ボ、ボクが捜しているのは……、せ……、せ……、せい……の……本を……
 せいの本? 何のせい?

          (つづく)

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2007年12月14日 (金)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その2

 キ、キミの肉体っ!?
 そっ。さっきのゴキブリみたいなあの男、私が事務をとる机の上に覆いかぶさるように両手を置いて、館内での飲食は禁止なのかとか、一、二分だけなら室内での携帯の使用は許可されるのかとか、書物の貸し出しとは何の関係もないような質問をいくつもしつづけたり、アレだコレだといっては、何度も私を脚立に昇らせたりしたのよ。
 ど、どうして……、そ、そんなことを……
 あんたバカぁ?
 バ、バカって? あ、あのぉ……
 本気でそんな質問しているのかって質問しているのよ。
 本気って……、あの、ホントにわ……、わからなくてぇ……
 じゃあ、わかるように説明してあげるわ。上から見下ろすようにすれば、胸の膨らみがどれくらいかよく観察できるし、下からの角度で視線を向ければ、より膨らみが協調されて胸の膨らみが見えるじゃない。あなた、そんなことも理解出来ないの?
 な、なるほど……、そ、そ、そういわれると……そうだね……、ハハ……
 それにしても、そんなにこの胸が珍しいのかしらね。ついているモノなんてみんな同じなのに。
 それはやっぱ……め、珍しいと思う……けど……、ち、ち、ちなみに……、む、胸のサイズ……なんかは……
 なんでそんな質問するのッ!?
 あッ、いやっ、ちがうっ、ちがうよ……、他意は、他意はないよ……、ただ、なんていうかそのっ……、話が出たついでにちょっと……、ちょっと質問してみただけで……、べつに深い意味があって質問したわけじゃなくって……、もしキミが答えたくないなら答えてくれなくても……
 99センチよ。
 きゅうじゅうきゅうーッ!?
 なに? 悪い?
 あっ、いや、べつに……、悪いっていうわけじゃ……
 じゃあ、なに?
 いや、だからそのぉ……、な、なんていうか……、なんていうかぁ……
 いいから、ハッキリいいなさい。私、男でも女でもウジウジしている人がいちばん嫌いなんだから。
 じゃ、じゃ、じゃあ……、いうけど……、99っていう数字も……、それはそれで……、一般の人がたどりつかないような……驚異的な数字だと思うけど、で、でも……、キミの場合……、なんていうか……、99より……、も、も……、もっと……あるようなぁ……
 そうなんじゃない?
 そ、そう!?
 99センチっていうのは、高校三年の秋に計測したときの数字で、それから十年くらい経っているから、いまなら軽く1メートル越してるんじゃない?

          (つづく)

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2007年12月12日 (水)

『潤色の舌戯』 -図書館司書編- その1

    『潤色の舌戯』 ― 図書館司書編 ―
                        作:真堂 晃

 ……ここはアンタのような腐り果てた人間のいるところじゃないわッ! サッサと出て行きなさいッ!!
 頼まれたって二度とこんなところになんか来てやるもんかってんだーッ……
 ……………
 なに? 何かご用?
 あっ、いやっ、あの……、な、なんていうかぁ……、こ、ここ……、としょ、図書っ……、図書館………ですよね?
 ココにそう書いてあるじゃない。それともこの文字が他の何かに読めて?
 あっ、いや、そういうわけで言ったわけじゃなくて……、なんていうかそのぉ……、じゃ、じゃあ……、本とか閲覧しても……いいんですか?
 図書館なら普通そうなんじゃなくって?
 そ、そうですね……、じゃ、じゃあ……、失礼させてもらって…………
 ……………
 あ、あのぉ……
 なに? トイレなら入ってきたところのすぐ右手だけど。
 い、いや……、そ、そういうことじゃなくて……
 なに?
 あ、あの、なんていうかぁ……、ここ、この図書館……、少し変わっているっていうか……、ちょっと狭いっていうか何ていうか……
 マンションの一室だからよ。それくらい見てわからない?
 そ、そういえば……、そ、そ、そうだね……
 ここ、民間の図書館なのよ。
 民間の……図書館?
 そう。無料で希望者に本を貸し出しを行っているのは、街中にある公共の図書館となんら変わらないんだけど、でもここ、もともとは私の家が、正確にいえば私の父が個人的に所有している部屋で、自宅に置くことが出来なくなった数多の書物を所蔵する、いわば倉庫のような部屋にすぎなかったんだけど、でも、それでは所蔵している書物がもったいないんじゃないかっていう意見が家族うちのひとりから出て、それじゃあ、この部屋にある書物を一時的に貸し出しを行いながら所蔵すれば、書物のもつ本来の目的も同時に果たせるだろうっていうことで家族の意見が一致して、それでこの部屋に所蔵されていた書物を利用した図書館が始まっていくわけなんだけど、ざっと見てもらっただけでもわかると思うけど、元々は現役の精神科医である私の父と、行き損ねの特攻隊員だった私の祖父の、ふたりのいらなくなった書物を所蔵していた部屋だから、精神科学や航空史や航空工学の、それも旧めかしい本ばかりで埋め尽くされていて、一般の図書館と比較すると……なに?
 えっ!? なに? なにって?
 あなた、途中から私の説明聞いていなかったでしょうッ!
 そっ、そんなことないよ……、そんな……、けっしてそんなこと……、
 ひょっとして……
 ひょっとしてって……、な、な、なんの……こと……
 ひょっとして、あなたもさっきのあの男と同じ目的でここにやって来たの!? そうなんでしょう?
 あの男とお、同じ……目的って……?
 私の肉体よ。

          (つづく)

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