『潤色の舌戯』 -恩師編- その1
『潤色の舌戯』 ―恩師編―
作 : 真堂 晃
……ですからっ、その程度のことで何度も電話してこないで下さいっ。朝からこれで………えっ? ええ、ええ。元気にやっていますし、ケガもしていませんし、食品偽装されたモノも一切食べていません。ゼンゼンまったく、生まれ変わってサイボーグにでもなったかのように元気にやってますから。ですから、何度もかけてこないで下さい。いいですか? 切りますよ。これで最後ですからね。切りますよ。ふぅ~……
…………………
あっ、いえ、ごめんなさいね。話の途中だったのに、途中で電話なんか受けちゃって……
ううん、それは別にいいんだけど………、あのさぁ、ホントはこんなこと先生に訊いちゃいけないのかもしれないけど、いま先生にかかってきた電話、誰からだったの? なんか男のひとみたいだったけど……
ベっ、べつに……、何でもないのよ。気にしなくていい男だから……
ひょっとして………なんかの勧誘?
勧誘ぅ!?
そう。どっかに墓を買えだの、うまい投資話があるからひとクチ乗ってみないかと、そういうの色々あるじゃない。
そっ、そんなのじゃないわ。そんなのじゃないったら……
そうなんだ。じゃあ、勧誘じゃないんだったら、一体なんだろう? いんちきミネラル・ウォーターの押し売りとか? この水はこの世のなかにある、ありとあらゆる万病に効く水でって長々とまくしたてて、ふつうに買えば百円かそこらの500mlのミネラル・ウォーターを五千円とかでケース単位で売りつけておいて、ただ高い金額で売っただけでもインチキなのに、万病に効くとかっていう効果はまったくの100%デタラメで、オマケにその儲けの一部が、ウラを開けてみればどっかの大物政治家のポケットに政治資金として転がり込んでいて、大物政治家は今日も何ひとつ仕事をしなくても大儲けっていう仕組みのインチキ水の押し売りの、あのいんちきミネラル・ウォーターの押し売りとか?
そっ、そんなのじゃないわっ。違う、違うっ。その話なら、先生もべつの先生から耳にしたことがあるけど、今のはそんなインチキ水の勧誘なんかとはまったく無縁の、ゼンゼンまったく関係ない電話よ。本当なんだからっ。
でもさぁ、梨々香が歌ってる『わたしはきょうもAVで気持ちよくお仕事』っていうあの曲、先生のケータイの着メロだよね? 駅でボクと待ち合わせしてた時から、“♪イク、イク、宇宙の果てでも、どこでも梨々香はイっちゃうの~”っていうあのリフレインの部分、先生のそのバッグの中から何度も何度も鳴ってたみたいで、あのしつこさから想像するとやっぱり何かの勧誘……
(つづく)
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